妖怪跋扈

悪夢の体験談

それはVサインではなかったの巻
叔母の決断(大学病院に献体)
私の叔母は豪快な人で、普通はなかなか踏み切れない「献体」の手続きを某大学病院と結んでいました。叔母は独身で、死後誰にも迷惑かけたくない、さらに自分の亡骸が誰かの役に立てるならばと、そのような決断をしていたのです。

叔母は大きな病院で亡くなったのですが、そこには当然、出入りの葬儀社などが控えています。叔母のように、自らの死後を想定していない場合、遺された者たちは、その葬儀社などのお世話になる筈です。故・黒木昭雄さんの「葬式の値段にはウラがある」などを読んでいた私は、背筋に冷たいものが走りました。そこに記されているような阿漕な葬儀社ばかりではないでしょうが、急成長する業界というものには、どんな手合いが紛れ込んでいるか分かりませんので、細心の注意を払う必要があるからです。

ともあれ、叔母の遺言に従い献体先の大学病院に連絡を入れました。この時、入院先の病院スタッフから「たとえ遺言があっても、献体などせずに遺族が弔ってあげるべきではないのか?」という視線を感じたように思ったのですが、それは私の完全な被害妄想であって、日本人の死生観というよりは、葬式仏教の奇妙な風土に染まった人間が抱きがちな妄想でした。

大学病院のスタッフは、すぐに駆け付けてくれました。その時、叔母は病院の無縁墓地に入ることを希望していたことを知らされたのですが、遺骨は返して欲しいと伝えました。遺骨の返還は2年以内になるとのことで、この時差がトラブルに繋がるとは、その時点では全く予想できませんでした。誤解される前に記しておくと、献体先の大学病院というのは非常に真摯で、遺体というものに最大限の敬意を払い、解剖研修などが終わった後は手厚い葬儀を行っています(献体を受ける大学病院というものは、一応に死者への敬意を最大限に払っているようです)。つまり、その後のトラブルとは、献体先の大学病院関連で勃発したものでは全くないという事を、先ずはお断りしておきます。

本当の供養とは何か?
叔母は個性が強い人だったので親類縁者とぶつかる事もあり、菩提寺にお墓を建立したのは叔母なのに、そこには入らないと決断していたのです。ただ私としては、叔母の両親が眠るその菩提寺で、何らかの供養をしてあげたいと余計なお世話を焼いてしまったのです。私は叔母の意志をある程度尊重し献体までは受容し、遺骨は都内の永代供養の寺院を見付け、遺骨が戻り次第に埋葬するつもりでいたのですが(後悔先に立たず)そこで止めておくべきでした。

菩提寺には入らないが供養だけはしてくれるのか・・・何か厭な予感がしたので、ネット経由で知り合った(信頼できる)浄土系僧侶の友人に相談してみたのです。

「うーーー ん。宗派は?・・・あ、そう。うーーーん、トラブるかもしれないなぁ。まぁ、とにかく事情を話して、とりあえず俗名のまま回向(えこう)して欲しいと伝えてみたら? お骨は戻ってきてからまた考える・・・というような事も、やりとりの中で言及する必要が出てくるかもしれないけど」

さて彼のアドバイス通り事情を話し「俗名で回向して欲しい」と伝えると、電話口でボソッと「・・・俗名で回向?・・・あぁ、いいですよ・・・分かりました」と、歯切れは悪いものの(一応)承諾はしてくれたのです。

さて法要の日、そこの僧侶は般若顔。いきなり「遺骨はいつ戻ってくるのか?」と詰め寄ってくるのです。そして、遺骨が戻らないのなら回向できないというような事を遠回しに言ってくる。ここでプツン!と切れそうになったのですが、(これまた日本的な発想ですが)叔母の顔に泥はぬれない・・・と耐え、遺骨が戻っ て来た時点でまたご相談させて貰うので、とりあえず「俗名で回向して欲しい」と告げたのです。すると・・・

「俗名で回向して欲しいなどと頼まれた覚えはない!」

それではお布施がとれないと思ったのか、既に仮位牌に戒名を一方的に認めていたのです。

「お金の話をするのは非常に不謹慎ですが、その用意して頂いた戒名で法要して頂く場合は、お布施はいかほど必要なのでしょう?」と引き攣りながら訊ねると、

victoria_o_2million「この戒名の格ならば」と、サインはV、二本の指を立てたのです。これは勿論2万や20万ではなく、200万を意味することは容易に察せられました。

ここまで来て帰るのは癪なので、「言った言わないになってしまいますが、俗名で回向して頂く程度のお布施しか持ち合わせていません。遺骨が戻って来たら、またその時点でご相談に上がろうと思いますが、今日、俗名で回向をお願いできないとなると、このまま帰るしかありません」と伝えると、僧侶の息子の方が回向するという事で落ち着いたのです。私の腸は煮えくり返っていたのですが、判断を誤り余計な事をすると、こういう次元のトラブルにも見舞われてしまうわけです。

数年後、都内の永代供養寺院に叔母の遺骨を預けました(母方の叔母だったので、家制度の元ではお墓は別になってしまうからです。ちなみに、そのお寺は「永代供養」と「戒名」のセット価格でした)

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